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最高裁判所第三小法廷 昭和27年(あ)5538号 決定 1954年3月23日

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人岡田実五郎、同酒井大の上告趣意について。

所論は事実誤認又は単なる法令違反の主張であって、刑訴四〇五条所定の上告理由にあたらない。そして、(一)公判調書における文字の挿入削除が刑訴規則五九条所定の方式を欠いていても、ただちにその挿入削除を無効とすべきではなく、その効力の有無は、裁判所が諸般の状況に照して合理的な裁量により決すべきものであり(昭和二三年(れ)三九七号同年七月二九日大法廷判決、昭和二三年(れ)九九八号同年一二月一一日第二小法廷判決参照)、(二)本件において、横領の訴因に対し詐欺の予備的訴因を追加したことにより、公訴事実の同一性は害されていないし、(三)また、主たる訴因と予備的訴因のある場合に、予備的訴因につき有罪を認定したときは、主文において主たる訴因につき無罪を言渡すべきものでないことは勿論、理由中においても、かならずしもこれに対する判断を明示することを要するものではないのであって、原判示はいずれも正当である。その他、記録を調べても、本件につき刑訴四一一条を適用すべき事由は認められない。

よって同四一四条、三八六条一項三号により裁判官全員一致の意見で主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 井上 登 裁判官 島 保 裁判官 河村又介 裁判官 本村善太郎)

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